映像で食っていきたい君へ【第2回】若きPV製作者のモガキ~いまのお前は3点だ

高橋さんは北海道出身という話ですが、東京に出て来ることで苦労されたのではないでしょうか?

「本当に来たんだ!」て、少し驚いた。

松澤:初めて会ったのは新千歳空港の喫茶店だったっけ。

高橋:入学したいと連絡して、来てもらったんですよね。でも、初めて会ってから、入学するまで2年もかかってしまった。学費もなにも足りなくて、親に頼れるような状況でもなくて。

松澤:その時スケジュール帳を見せてもらったら、半端なく忙しい。スケジュールがバイトで詰まりすぎだったのを覚えてる。

高橋:服屋、居酒屋、引越のバイトをかけもちで。とにかく映像業界で働きたくて、だから全力でバイトして東京に行くお金、UTBに入学するお金を貯めようと。2年もかかりましたけど。

松澤:入学してきたときは「本当に来たんだ!」て、少し驚いた。なにがそこまでさせたんだろう?

高橋:小栗旬ですね(笑 もう純粋に小栗旬がタイプで。特に「クローズ2(2009年/三池崇史監督)」の小栗旬が最高にかっこよくて。業界に入りましたけど、まだ会えない。入学前のバイトは、とにかくお金のため。そうじゃなくて、やりたいことで稼ぎたいという気持ちはありました。2年間のバイトで、その気持ちは強くなったかも。

映像を学ぶにも、多くの専門学校はありますが、UTBを選んだ理由はどんなところだったのでしょう?

高橋:他の専門学校も候補には挙がっていたんです。一番のポイントは1年制っていうところでしたね。2年制だと学費が厳しい。もうそれは現実として大きな問題でした。もうひとつ、どんどん現場に参加できるというところが良いなって。

松澤:実際、現場に出るとどんなことを感じた?

高橋:最初の現場は、安室奈美恵さんと平井堅さんの「グロテスク feat. 安室奈美恵」のPV撮影だったんですよ。UTBの学生が私を含めて3人、現場に入っていて。印象的だったのが、最初から学生扱いしてくれない。「学生さんが見学にきてる」「学生さんが手伝いにきてる」というのではなく、普通に厳しく、一スタッフとして扱われる。そして、小さなことでも一人一人に仕事を任せてもらえる。厳しいんですけど、うれしかったですね。

松澤:そういう現場に出て行っていると、夏を過ぎた頃に目の色が変わってくる学生が出て来るんだよね。現場のリアルがわかってくる。

高橋:朝から始めて翌朝になっても現場が終わっていないとか(笑

松澤:そういうリアルも含めて。

生徒をお客さんだと思ったら、成立しない

高橋:現場に出ながらも学校の実習もあって。覚えているのが最後の実習で、一人一人の課題なので逃げようがない。しかも当日に「これをやれ」と言われて。

松澤:実習とはいえ、普通の仕事として扱うからね。授業料をもらっているから学生はお客さんなんだけれど、そう思っていたらUTBは成立しない。自分でやれる生徒を育てたいし、自主性は重視しないと。

高橋:確か実習の内容もプレゼンの資料を作るというもので、映像はそのプレゼン資料の一部。プレゼンの企画で怒られて、映像で怒られて。朝一でテーマが伝えられていて、必要なモノを準備する時間もほとんどない中で。もうむちゃぶりなんですけれど、いま、現場ではむちゃぶりが当たり前ですから。鍛えられましたね。

松澤:耳障りが良いことを言っても、卒業して現場に出て「こんなの違う」ってなったらむしろかわいそうでしょう。

高橋:なんだか厳しい話ばっかりになってますけど、楽しいこともあったんですよ(笑 確か2回目の制作実習は、先生が監督で作品を作るというもので。その時はいろんな先生と話せて楽しかった。中には現場で人が変わってしまう先生もいましたけど。

松澤:僕自身は、生徒と言うよりも後輩だと思ってるんだよね。他の先生もそうだと思う。実はUTBで教え始めた頃、最初は正直、こしかけのつもりだったんだよね。それがある時に先輩のディレクターから「お前はUTBをどうしたいんだ?」と聞かれて。そこで始めて本気で考えた。自分がした苦労はさせたくない。だから、徹底的に現場のリアルを教えようって。

高橋:授業の中にはダンスとかもあったんですけど、あれはどういう意味で?

松澤:他にも演技レッスンとかデイベートの授業もあったはず。一見関係ないように思えるけれど、全部繋がっているんだよ。むちゃぶりに応えることができるようにということと何かしらを表現をするっていう訓練。最終的にはそれが仕事になるからね。

高橋:そういう意味だったんですか(笑

松澤:UTBはコースもわかれてないでしょう。普通だったら、CM制作コースとか音響コースとかカメラマンコースとかにわかれてる。そうしていないのは、狭い分野のスペシャリストは今の時代、通用しないから。昔はスペシャリスト集団が映像を作ってたんだ。でもいまはデジタル化が進んで、極端な話、全部一人で作ることもできるようになってる。だから、全部知ってるゼネラリストじゃないと生き残れない。だから、現場をたくさん経験して、いろんなことを学ばせてる。

高橋:言われてみればそうですね。学生の頃はそこまで気が付きませんでしたけど。

徹底して、映像業界のリアルを体験させるUTBでの学生生活。そこで待っていた出来事とは?

現場の厳しさを通じて、夢を見なくなる

いま、高橋さんはどんな仕事をされているのでしょう?

高橋:実は卒業ぎりぎりまで就職先が決まらなくて、最終的には松澤さんに相談して今の会社に就職したんです。いまはPVなんかを作っています。在学中に現場にたくさん出るので、いろんな会社を見ることができて、ときには「卒業したらおいで」と誘われることもありました。チャンスは毎日。でも、それが多すぎて決まらなかったという。

松澤:現場のスタッフは罵声を浴びせながらも、ちゃんと人を見てるしね。

高橋:学生のころもそうでしたし、就職してからも、最初の頃は現場に出ても実はなにもできないんですよ。言われたことをやるのに精いっぱいで、それも満足にできていたかどうか、今となっては疑問があるくらい。怒られっぱなしです。家に帰って泣いていたこともあります。でもそれを乗りこえられたら自信に変わり、ちょっとづつですけど成長出来てると思うんです。

松澤:だれしも、夢を持ってこの業界に入ってくるんですよ。でも本当にしんどい思いをするとだんだん、夢を見なくなってくる。浮ついたものが消えていく。泥臭いリアルな現場を知ると、一皮剥けてくるんです。ボンヤリとした夢がリアルな現実に変わっていく。「映画監督になれたらいいなー」が「こうすれば映画監督になれる」に変わってくる。

高橋:夢が目標に変わるんですよね。入学した頃は「映画監督になりたい」と思ってました。いまは「映画監督になるには、やらなければならないことがある」というのがわかってる。それが難しいこともわかってます。誰かに教えてもらったというよりも現場でわかったというか。

松澤:現場でも誰も教えてくれないからね。自分で学べ、という。自分で学ぶことができる人が伸びていく。

まだまだ現場で学ぶことが多いのでしょうか?

高橋:以前、ある監督の現場に入ったとき「いまのお前は3点」って言われたんです。ところが次にその監督の現場に入ったら「うん、いまは18点だな」って。6倍ですよ、6倍。もちろん、百点満点での採点なんですけど、自分が成長してるんだ、それを見ていてくれる人がいるんだってことがうれしくて。まだまだ学ぶことばっかりです。他の専門学校で自分たちだけで作品を作るよりも、学生の頃から現場に出て怒鳴られた方がいい。厳しいところに身を置いた方がいいと思いますね。

松澤:映像業界で働きたいと思っても、何をしたら良いのかわからないと思うんですよ。で、専門学校の案内を見るとナントカコースにわかれていて、自分がどのコースに行けば良いのかもわからない。だったら、UTBで全部やっちゃった方がいいかもしれない。

ちなみに高橋さんの今の夢はなんでしょう?

高橋:小栗旬に会うこと(笑

松澤:まだ会えないんだよね。

高橋:実際に現場で会ったら、しれっと挨拶してるかもしれない。心の中はドキドキなんですけど。それはさておき、ゾンビ映画も大好きで、やっぱりいつかは映画監督になりたい。いまはその道筋が見えているので、そのためにやるべきことをやっていくってところでしょうか。

松澤:高橋さんみたいな生徒がすごい映画を撮ってくれたら、それが僕の自慢になる。というか、それってもう俺の作品じゃない?ということで。

厳しい仕事を支えてくれるのは、仲間と「やりたい」という気持ち

先程、松澤先生が「先生と生徒と言うよりも、先輩と後輩」という話がありましたが、現場に行くとUTBの先輩にも出会うことが多いのでしょうか?

高橋:学生の頃に行く現場では、先輩が学生を呼んだりすることも多くて。1年制なので同じ時に学校にはいないけれど、先輩後輩という意識は強いですね。就職してからも、あちこちで先輩に会いますよ。現場で先輩がいるとちょっと安心します。

松澤:同級生とも会う?

高橋:意外に会います。学生時代に課題で互いに監督とスタッフの関係になったりしていますし、一緒に厳しい現場で半泣きになっていた経験があったりするので、ただの友達と言うよりも戦友みたいな感じで、濃い関係になってますね。電話して仕事の愚痴を言ったりすることもありますし。それは支えになってます。

松澤:入学してからでも、就職してからでも、辛いと思ったことはある?

高橋:学生の時なんですけど、PVの現場ばかり行っていて、あるときCMの現場に入ったんですよ。そうすると勝手が全然違って、本当に何もわからなくて。結局なにもできなかったことが、悔しくて悔しくて。

松澤:そういう辛いこともあったんだね。逆に楽しいことは?

高橋:PVの現場って目の前でアーティストのライブを見られるじゃないですか。すごいセットを組んでいるんだけど、観客はいない。まるでプライベートライブを見ているみたいですよね。他にも合成用にグリーンバックで撮影した映像が完成して、それを見ると自分で感動したりして。エンドロールに名前が出てると、「そう、これ私がやった!」ってうれしくなります。

ミーハーとオタクはどちらが向いている?

松澤:そういう話とか小栗旬の話を聞くとミーハーっぽいんだけどね。高橋さんはそれが濃い。

高橋:濃いと何が違うんですか?

松澤:ミーハーって表面だけをなぞっているというか、浅いんだよ。でも、濃いミーハーは深い。流行り物をなんでも見てますよという「広く浅く」タイプよりも、「時代劇しか見てません。でも徹底的に見てます」というほうが、この業界に向いていると思って。

高橋:それはオタクですよね。深く考えるから、それが厳しい状況になったり、一時「嫌だな」と思っても、その深さが続けるエネルギーになる。ミーハーでもいいと思うんですけど、浅いのじゃなくて深いのがいい。それが「やりたい」っていう気持に繋がると思うんです。

松澤:最後の最後は気持ちだったりするしね。厳しい仕事を続けていくのに、気持ちがなかったら無理。

高橋:やりたい、やろうって思うことが大事で。「できない」と思ってしまったら、「どうしてできないのか」を考えて、決め付けない方がいいと思うんですよ。やりたいことがあったから、3件もアルバイトをかけもちできたし。

松澤:自分がやりたいことがあって、好きなものがあるなら、それを吸収していって欲しいね。それが自分の幅を広げることになって。そういったことは全部、将来の財産になっていく。

高橋:学生時代の友達も、それぞれ好きなことがあって、やりたいことがあるわけじゃないですか。それをお互いに知っているから、吸収することも多いし、友達から学べることもたくさんある。

松澤:そうやって成長していく生徒を見るのも楽しいよ。

高橋:何年かして、先生に会ったときに「すげー、変わったな」って言われたいですね。もちろん、良い意味で。

松澤:期待してるよ。きっと変わらないところもあると思うけど、それも大事だからね。

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