映像で食っていきたい君へ【第1回】若きCMディレクターのモガキ~おまえらはコジキだ

岡﨑さんは、いまはCM制作に携わっておられるそうですが、そもそもUTBに入学したきっかけはどんなものだったのでしょう?

大学時代から撮っていたので、正直、自信はあったんです。

岡崎:大学時代から自主映画を撮っていたんですよ。松田優作の「探偵物語」なんかのパロディものなんかを。その流れで「映像で喰っていきたい」と思ったのが入学のきっかけですね。
1年制というのも、現場での実習が中心というのも、はやくプロになりたいという気持ちにぴったりだった。そもそも高校生の時に「マグノリア(1999年アメリカ/ポール・トーマス・アンダーソン監督)」を観て、「これはなんだ!映画ってすごい!」って思ったのが映像に興味を持つようになった理由なんですけど。

松澤:岡﨑が入学願書を出しに来たとき、「あ、なんかスカしたヤツが来たな」って思ったんだよね。「俺、素人じゃないし」って感じが。

岡崎:それはあったかもしれない(苦笑 入学願書を出すときに、作文を提出しなければいけなくて、その作文を見た松澤さんに「お前、これ、本気で書いたの?」って言われたんですよ。

松澤:なんか通り一遍のことをさらっと書いてあったんだよね。浅いなーっ、流してるなーって。「コイツ、ブレーキをかけてるんじゃないか?」って思ったのは覚えてる。

岡崎:「え?そこ本気で書くところ?」って(笑 そういうノリなの?と思いましたけど。

松澤:そういうところも含めて、「俺やってました感」が。

岡崎:大学時代から撮っていたので、正直、自信はあったんです。素人とは違うぞって。周囲には「3年、映像業界でやって、駄目だったら辞める」って言ってました。強気の発言なんですけど、実は心の奥には不安もあって。本当にやっていけるのかなという気持ちがどこかにあったんでしょうね。今思えば、複雑でしたね。入学してからも、最初に行く現場が不安で。前の晩は眠れなかった。

松澤:実際に現場に出たらどうだった?

岡崎:最初は、それこそ雑用ばかりですよ、当たり前ですけど。俺の緊張と不安はなんだったんだ?って感じで。

松澤:じゃ、2回目からは緊張せずに?

岡崎:それが緊張しっぱなしです。だんだん、雑用以外のことを任されるようになっていくじゃないですか、覚えることが多くて。それよりも、入学式のことを良く覚えてますね。

松澤:入学式? なにかあった?

おまえ等はゴミだって、入学式で言われたこと

まず「いらない」ってことを知った上でなにができるかを考えろって言われた気がして。初心を叩きこまれた感じでした。

岡崎:いきなり「おまえ等はゴミだ。映像産業は社会にいらない産業なんだ」って。強烈でした。

松澤:まぁ、事実だし。農業や漁業と違って、なくても誰も困らないでしょ。

岡崎:正直、シビれましたね。映像業界って華やかな業界だけれどそれだけじゃない。まず「いらない」ってことを知った上でなにができるかを考えろって言われた気がして。初心を叩きこまれた感じでした。いまはCM制作会社にいますけれど、他の営業や事務の社員とはまるで勤務形態が違う。ぼくら映像を作る人間は、仕事で価値を見せなければいけない。そうでないと存在価値がないんだと思いますね。

松澤:そのころの現場で印象に残っている現場ってある?

岡崎:ある監督の自主制作映画の現場ですね。怒声罵声が飛び交って。怖かったのは事実なんですが、「そうか、プロはこうやって映画を撮るんだ」って肌で感じることができました。

松澤:現場を知るっていうのは大事だね。技術を身に付けることはいつでもできるんだけど、学生のうちに現場を知ることは絶対に必要。業界のきれいなところと技術だけ教えても、現場に出たら怒声と罵声に押し潰されてなにもできなくなっちゃう。あげくに業界を辞めてしまったり。

岡崎:確かに、UTBでは技術ではなくてメンタルを学んだ気がしますね。あと、一緒に現場に行っている同期の失敗を見て「そうか、ああやっちゃいけないんだ」って学んだり。授業でも先生方は皆、現場に近い話を教えてくれる。自分が映像業界に入ろうとしているんだって思えました。結構役に立ったのは「現場で評価されやすいポイント」とか。

松澤:先生もみんな普段は現場にいる人間だからね。「こういうヤツがいるといい」「そういうことをやってくれると(監督は)うれしい」って自然に口に出て来るから。

岡崎:そういうのって、技術じゃないですし、普通は誰も教えてくれない。それがわからないまま現場で怒鳴られていたら、辛いですよ。

松澤:そもそも大学を卒業した段階で就職は考えなかったの?

岡崎:ちょうどリーマンショックの頃で。同級生達が就職活動で苦しんでいるのをもて「窮屈そうだな」って思ったんです。それで、逃げるわけじゃないんですけど、映像をやって自分を確立したかったんですね。もう自主映画はやらない、プロになろうと思った。だから、1年ですぐ現場に出られるUTBが魅力的だったんです。

――華やかである一方、厳しくもある映像業界。岡﨑さんは卒業後、CM制作会社に就職します。そこで待っていた出来事とは?

本気で辞めようと思った激務の連続

映画で映像に興味を持って、いまはCM制作ということですが、なぜCM業界を選ばれたのでしょう?

岡崎:CMに興味を持ったのは、UTBにいた頃ですね。いろんな現場を知ることで表現することのむずかしさを思いしって。そもそもCMってまず商品があって、その商品に価値がある。映像そのものにも価値があるけれど、CMは商品の価値を高めるものでなければならない。授業でプロの話を聞いて、CMで結果を出すことの凄さを知ったんです。

松澤:そういえば、学生の頃のタレントさんをプロモーションする映像制作の話があったね。

岡崎:松澤さんにボロクソに言われたヤツですね(苦笑 そもそもタレントのプロモーション映像ってタレントの魅力を伝えるものじゃないですか。その時はそこを履きちがえてしまって、いわゆる「作品」を作ってしまった。あのとき、松澤さんマジギレしてましたよね。

松澤:いや、映像としては悪くなかったんだよ。でも目的が違うって話で。あそこで俺がOK出すと卒業してから仕事で同じことをやっちゃう。だから鬼になる(笑

岡崎:いまならわかるんですが。その厳しさが今の仕事に生きている感じはありますよ。

――最初に「現場が怖かった」という話がありましたが、もう馴れましたか?

黙っていると結果を出せない。声を大きくして今何をしているのか、なにができてなにができないのかを周囲に伝え続けないと。

岡崎:まだ怖いですね。でも、忙しさで疲弊して怖さが麻痺していたり、コミュニケーションが取れるようになって怖さが緩和されたり。現場に知っている人が増えてきたので楽になってきたかもしれないんですが。

松澤:コミュニケーションは大事だね。

岡崎:基本的に「できない」を押し付けられるのが現場なんですよ。それを黙っていると結果を出せない。声を大きくして今何をしているのか、なにができてなにができないのかを周囲に伝え続けないと。

松澤:ちなみに辞めようと思ったことはない?

岡崎:ありますよ。就職して2~3年目の頃だったと思います。忙しくて忙しくて、しかも「この忙しさが自分の将来に繋がるのか?」っていう疑問が出て来てしまって。諦めようと思いましたね。それでも辞める決心も付かなくて。

松澤:で、いまでも続けているっていうのは?

岡崎:ディレクターになって、がらっと環境が変わったんです。それまではディレクターの指示で動いていたのが、自分が主体的に動きはじめると、全然違った。自分で現場、作品をコントロールできるようになったら、ぱぁっと晴れたんです。いまはCMディレクターとしてやっていきたいという気持ちが強いですね。最終的に映画の世界に入れればそれも良いと思いますけど、まずはCMディレクターとしてやっていくことだと思っています。

松澤:映画はもういいの、本当に?

岡崎:自己表現の映像を撮るのは、もう死ぬ前でいいかなって(笑 基本的にCMの仕事は、企画があって、構成があって、演出がある。まず企画が決まったところでそれに沿ったものを作っていく。じゃ、誰が撮っても同じというわけではなくて、自分が作ったことの意味、自分が関わった意味を見せないといけない。同じ企画だとしても撮る人によって違うモノができあがってくるわけで、そこに自分なりのエッジを効かせて、それが企画の目的を達成できる方向に働いていれば良いと思います。

松澤:すっかり職人気質だね。あんなにスカしてたのに(笑

岡崎:変わった実感はあまりないんですが。さんざん現場で叱られましたから。今思うのは、自分のためではなく人のために映像を作るってことの大事さですね。これからUTBに入ってくる人にもそれは伝えたい。

一人前になるために必要なことに気付いた瞬間

学生時代から現場に出て、厳しい環境にいるともの作りの大変さも味わうのではないでしょうか?

岡崎:さっきの話にも出た映画の現場とか、修羅場を色々と経験して、その後、美術を担当して自分の裁量で仕事をさせてもらったことがあるんです。“モノ作り”に触れた瞬間でしたね。また、いろんな現場に行くことで制作に関わる雑務を一通り覚えることもできましたし、他の人のやり方を観ることができたのも新鮮でした。大変だけれど、それがあるから楽しい。生意気だけれど、学生の頃から「自分ならこう撮る」っていつも考えていました。

松澤:そういうところがないと駄目かもしれない。

岡崎:いまはまずCMディレクターとして一人前になりたい。クライアントの要望を満たした上で、自分のこだわりを盛りこんでいく。このバランスを間違えたらダメなんですけど。

松澤:CMは作品であると同時に商品だからね。そこは大事。

岡崎:どういうトーンで撮るかというところは外してはいけないんだと思ってます。その中でどう味つけするか。

同期の仲閒とはいまでも連絡は取っているんでしょうか?

麦踏みっていうよね。麦は踏まれて強くなる。それと同じ。

岡崎:このあいだ、同期に仕事を頼みましたよ。それだけじゃなくて、現場に行くと知った顔がいることが増えてきました。現場で怒鳴られた人とか、先輩とか、同期とか。そういった意味では、ものすごく助かっています。知った顔がいると現場の怖さもやわらぎますし。

松澤:だんだん業界にUTBのOBも増えてきているし、先輩が学生を現場に呼んだり、僕自身、仕事を学生だけじゃなく、OBに頼むことも増えてきてる。

岡崎:学生時代に怒鳴られたりして踏み付けられた経験が大事なんだなと、今になって気が付きますね。

松澤:僕の頃は学生時代に踏まれなかった。だから卒業してから苦労したんだよ。それで学生には厳しいことを言う。麦踏みっていうよね。麦は踏まれて強くなる。それと同じ。

仕事を通して、モノ作りのむずかしさを感じるときはどんなときでしょう?

岡崎:いつも、ですね。いま思っているのは、CMディレクターとしてこれからもやっていけるようになること。いまは、会社の看板で仕事をしているんです。そこから抜けだして「岡﨑に頼みたい」といわれるように、5年以内にはなりたい。そのためには、まず作り続けることが一番大事だと思います。いろんな現場を経験して、仕事で藻掻いて。いまでも自分が撮ったモノを人に見せるのは怖いと思うときがありますよ。ただ、だからこそ、もの作りができるんだと思います。今感じるのは、例えば将来、映画監督になろうと思ったら、「どうすればいいのか」がわかってきているんです。それはUTBにいた頃から経験してきたことが繋がっていて、入学前はぼんやりと「映画監督になりたい」と思っていたのが、「なるためにはどうすればいいか」がわかっている。それは現場の現実を教えてくれたからだと思うんです。「やりたいからやるんだ」という気持ちがあるから、どんなに厳しくても続けていけるんですけど、それも一人だと大変。理解してくれる人がいるとものすごく楽になる。そういうときに同期や先輩は助けになりますよね。現場を知っていることと仲間がいること。それが一人前になるためには絶対に必要なんだと思います。

「コイツは俺の教え子だ」って自慢できるね。

松澤:1年制の良いところで、先輩後輩っていっても、学生時代に直接の上下関係があったわけじゃない。先輩はもうプロだし、自分が後輩の面倒を見るときには自分がプロ。余計なわずらわしさがないんだよ。

岡崎:そういえば、松澤さんはこれからどういう作品を撮りたいんですか?

松澤:最近考えているのは、自分がこれからどれだけの作品を作っていけるかっていうこと。時間は限られている。そこで発想を変えて、自分が教えた学生達が一人前になって撮った作品、それも僕が関わった作品だと思うようにした。これから先、スターウォーズのエンドロールに教え子の名前が出るかもしれない。そうしたら「コイツは俺の教え子だ」って自慢できるね。

岡崎:僕も「このCMを撮ったのは俺の教え子だ」って言ってもらえるようにならないと。

松澤:大丈夫、もう言ってるから。

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